8月18日

8月18日

今日も朝からどんよりした天気。ずっと低気圧が続いてるせいで、最近体が重くて仕方がない。

 

午前はメンタルクリニックの予約が入っていたので、家で休んでいたい気持ちを振り切り、地下鉄に乗り込んだ。電車が数分数分毎に駅に着くたびに、大量の人々が吸引されるように乗り込んでくる。体調の悪い時は、人の密度が高くなるにつれて呼吸がしにくくなってしまうので、イヤホンでできるだけアップテンポの洋楽を聞いて気を紛らわせてた。

 

メンタルクリニックの診察室で、パソコンモニターの向いにいる医師に、最近の体調を報告する。開け放たれた窓から部屋に充満する道路の喧噪に声をかき消されないように、医師が打つキーボードの乾いた音を聞きながら、いつもより少し大きな声で話をした。

 

「では」と、医師が初めて私のほうに体を向けた。

「いつもの薬を出しておきますので」

あんまり今の薬が効いているのかもわからなかったけど、どれも飲んでも一緒だろうという諦めもあり、「ありがとうございました」と黙って診察室を出た。

 

待合室で会計を待っていると、診察に入る前よりずっと気分がふさぎ込み、勝手に涙が溢れてきた。診察室で「集中治療室で意識のなかった3日間が一番幸せだったと思います」とネガティブなことを口にしたのが良くなかったのかもしれない。ついさっきより、私の背後に死が寄り添って、死ぬことしか考えられなくなってしまった。帰り道にあったドラックストアの鎮痛剤や風邪薬のコーナーに直行し、ラベルを片っ端からチェックする。60錠1500円、60錠1890円・・・。しかし、今これを沢山購入してもホテル代が余らない。あの日から私はクレジットカードもキャッシュカードも取り上げられていて少しの現金しか持たされていないのだ。諦めて店を出た後も、私の頭は死ぬことから逃れられないでいた。もうこうなったら、考えないようにしよう!ということは私に通じない。本当は、道に蹲って大声で泣きたい気分なのだけど、変に頭は冷静で、いまだ黙々と死についての計画が練られている。

 

地下街の人込みに紛れながらも、このまま私の足がひとりでに死に向かっているのではないかと不安になり、とりあえず目に入った雑貨屋さんに飛び込んでみた。お行儀よく陳列された色とりどりのアクセサリーに照明が反射してまぶしかった。ふと目前にあるピアスに手を伸ばすと、ほんの少しだけだけど死が遠のいてくれたから、そのまま20分ほどピアスを真剣に物色し、一番かわいいピアスを買った。店先で大急ぎで包装紙を開けてピアスを付けてみて、手鏡をのぞき込む。小さくゴールドに光ってるピアスが耳元で揺れるのを見ていると、今日は何とか生き延びられそうな気がしてきたので、そのままいつもの病院に行って痛み止めの点滴を打って帰った。